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オセロゲームとは、片面が白で片面が黒の丸いチップを使ってやるゲームであり、交互にチップを盤のますに置いていく。
二つのチップで相手のチップをはさむと相手の色を自分の色に変えることができるという、いわゆる陣取りゲームである。
最後に自分の色の数が多い方が勝ち。
昔からあるゲームなので、子供の頃楽しんで遊んだ想い出がある方が多いだろう。
途中どんなに黒が多くても最後に白ではさんでしまえば、白に変わって勝ち。
相手の打った黒チップを白にひっくり返す時は、何とも言えず嬉しくわくわくした気分になる。
どんなに黒星があろうとも、最後に良い手を打てば白へと黒星が白星に変わるところがいい。
人生劇場のようだ。
人生黒星の時は、悩み傷つき自分ほど不幸な人はいないと悲観的になる。
が、その悩みを通り越して違う人生を歩み始めると、「あの悩みがあったからこそ今の自分がある」と思う。
そう思えた時点で、不幸と思った過去は白星と変わる。
私にも随分、黒星があった。
試練があった。
子育ての悩みは、質は違ってもすべての親にあるだろう。
親も、そうやって成長していくのだ。
昔に比べて、自分で自分の命を絶つ人が多くなった。
人身事故で電車が止まるのも、そう珍しいことではない。
「何故、死ぬことを考えるんだろう。
死ぬ勇気があるのなら、死ぬ気で頑張れ!」と今は思うが、私にも心中や自殺する人の気持ちがわかる時期があった。
二十五年前のことであるが、夫の事業が失敗し倒産。
まだ、長女がやっと幼稚園に入った頃のことである。
当時は、厚木に家を建て住んでいたが、倒産後、債権者が家にまで来て子供達に嫌な思いをさせてはいけないと思い、しばらく家を出ることにした。
冷静に考えればすぐに家が他人に渡るわけでもなかったが、何せ世間知らず。
倒産=家がなくなると思い込んでいた。
誰がいつ家に入ってくるかわからないと思い、いつも椅麗に掃除をし、アルバムや大切な手紙は妹に預けた。
そして騒動が落ち着くまで、小さい四人の子を車に乗せて静岡三島に行った。
友人の好意で、社宅の空いていた部屋に住まわせてもらったのだ。
夫は、冬なので出来るだけ暖かいところがいいだろう、と妻子の居場所を捜したというが、社宅の庭からは雪をかぶった富士山が大きく美しく見えた。
複雑な気持ちになったのを覚えている。
その年の十二月二十四日、クリスマスイブは何もないがらんとした部屋で過ごさねばならなかったが、三島に住む夫の友人が毎で飾られた大きなクリスマスケーキを手に訪ねて下さった。
机もなかった。
お借りしたストーブが部屋にぽつんとあるだけであったが、暖をとりその立場に不釣り合いのケーキをいただいた。
人の暖かさが心にしみる。
「私がしっかりせねば…泣くもんか」四人の子の母として、出来るだけ明るく振る舞ったが…。
幸い家は売らずにすみ、事業も時間をかけて何とか立て直すことができた。
会社は安定を取り戻し、このまま順調にいくのだろうと思った。
しかし、どういうわけか再び二度目の倒産。
その頃は高円寺に住む祖父母が亡くなり、孫である私たちが松浦家を継いでいたので我が家はE寺であったが、今度はE寺の家にまで差押え執行官がやって来た。
そして、冷蔵庫、洗濯機、書棚、机等、子供の物以外には札を貼っていった。
Mの先祖からの家は夫名義でなかったので残ったが、厚木の家を売り夫の名義のものはすべて売った。
平気な顔をしていたつもりだったが、心身ともにぼろぼろで体調も崩した。
昔は新聞で、数百万円の借金のために心中、といったような記事を見るたびに「何故この金額で心中するのか?死ぬ気で頑張ればいいのに」と思っていたが、この時ばかりは心中する人の気持ちが良くわかるようだった。
精神的にも相当まいっていて、よほど思い詰めた形相をしていたのだろう。
そんな時ふと、長女が私に「私を殺さないでね」と言った。
その長女の言葉に我に返った。
子供達の前では辛い姿は見せまいと努力してはいたが、やはり察するものである。
子供たちが寝ている時間には気がゆるんでいたため、そんな姿を見てしまったのかもしれない。
子供達に申し訳ない思いをさせてしまった。
しかし、その言葉のおかげで我に返ることができた。
正気にもどったら母は強しである。
「八方ふさがりでも天は開いている」本来は、楽天的に考える性格であった。
正気になると、それは強い。
「人が地球に生きていること自体が奇跡であり、何か使命がなければこの世に生まれないはずだ。
使命を全うするための準備は、私を作った創造主がして下さっているはず。
今生かされているということは、まだ使命がある証拠だ。
一生懸命前だけを向いて歩いていけばいいんだ」どん底の精神状態から、こう考えられるようになったことは本当に幸いであった。
あの試練から二十年以上が経った。
自分でも、その間よく頑張ったと思う。
仕事を通して、子育てを通して、多くの活動を通して、たくさんの人と出会い、それぞれの人生があることを知った。
多くの悩みを抱えている人にも出会った。
悩みの質は違い、他人からは些細な悩みにみえても、本人はとても苦しいのだということも知った。
戦後教育の結果か、日本は毅然とした外交ができなくなってしまっている。
また、唯一の自信であった経済までもが悪くなってしまった。
日本人として国益を考える教育をせねば、日本の立場はもっと低くなってしまう。
そして、本当の悩みは他人には言わない、いや、言えないということも体験した。
他人に言える時は、その不幸の渦を這い出て心静かに白星になってから「こうだった」と語る。
言える悩みは、すでに自分の中で消化済みなのかもしれない。
他人への相談は、一押しのアドバイスが欲しいだけかも知れないと思う。
先日、私が教育問題に取り組んで活動していることを知っているある社長に「Mさん。
教育だけでは飯は食えないんだよ」と言われてしまった。
事業家の苦労など解らないくせにとまではおっしゃらなかったが、心の中では思っているだろうと感じた。
「倒産の苦労は体験済み。
だからこそ、教育が重要なんじゃないですか」と言いたかったが、やめた。
きちんと教育されてこそ、経済も豊かになるのである。
経済まで外国にやられっぱなしの日々。
本は、毅然とした日本人が育たない限り良くはならない。
これまでの多くの出来事を通して思うことは、「人生の経験には一つも無駄がない」そしてまた、多くの出会いで人生が変わるということである。
人は、一生のうち会うべき人には必ず出会える。
それも、一瞬早くなく一瞬遅くなくその出会いを通して黒星は白星に変わっていった、桜がちらほらと咲き始めた。
桜はいつ見ても美しい。
絵にも描かれ、詩となり、人の心を動かしてきた桜。
膨らんだ雷も「春ですよ」と語ってくれているようで、季節の移り変わりを感じさせるし、少しピンクに染まった雷もいい。
ぽつぽつ咲き始めたなぁと思うと、もう満開。
満開の桜は何ともいえない美しさだが、その美しさの時期は短い。
そして桜ふぶき…。
風にのって粉雪のように舞う。
残念だわ…と思って木を見上げると、もう若葉がでている。
時の移ろいを感じる桜であるが、最近の日本は「桜の季節になるとねえ」と言い、桜のせいではないのに春を嫌う人が多い。
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